0.概要

学術団体等を一般社団法人で運営している場合の税務上の論点について、以下の順にポイントになる部分を出来るだけわかりやすく解説していきます。

 ・法人税

 ・任意団体から一般社団法人化

 ・消費税

 

一般社団法人の税金計算は株式会社とは大きく異なっています(そもそも、学術団体等に税金がかかるのかという疑問もあるかもしれません)。そのため、一般的な税務の理解だけでは正確な税金計算ができないケースが多々ありますので、適切な税務対応の参考にして頂けますと幸いです。

 

1.法人税

ここでは、一般社団法人の法人税について、以下の順に説明いたします。

・法人税の対象

・収益事業の利益の計算

・税金計算

 

(1)法人税の対象

学術団体などは、会員の研修やその学術の啓もう・普及などを目的としている、つまり営利目的ではないため、法人税は課されないというイメージがあるかもしれません。また、一般社団法人は公益的なものであるという印象から、税金は免除されると考えられているかもしれません。もしくは、赤字だから税金は発生しないという考えもあるかもしれません。

 

しかし、法人税法では一般社団法人がどのような目的で設立・運営されているかで課税・不課税を判断しているのではありません。また、単純に赤字だから税金は発生しないとも言い切れません。法人税法は、次の2段階で課税対象を決定しています。

 

1段階目は、その法人がどのような組織なのか、具体的には非営利型法人に該当するかどうかを確認します(「非営利型法人」とは法人税法の用語で、詳細は後述致します)。非営利型法人に該当しない場合には、株式会社と同じようにすべての所得(法人税法上の利益です)に課税されます。

 

2段階目(1段階目で非営利型法人に該当した場合)は、実際にどのような事業を行っているのかに着目します。具体的には法人税法が定める収益事業(物品販売業など34事業)と呼ばれる事業と行っていれば、その収益事業に対して課税します。逆に収益事業に該当する事業を行っていなければ、法人税は課されません。

 

以下、1段階目(非営利型法人)と2段階目(収益事業)について、詳しく見ていきます。

 

①非営利型法人

非営利型法人は、「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2パターンに分類されます。それぞれに要件は以下の通りです。

 

イ.非営利性が徹底された法人

以下の4つの要件を全て満たした法人です。

1 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること

2 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること

3 上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと

4 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

 

ロ.共益的活動を目的とする法人

以下の7つの要件を全て満たした法人です。

1 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。

2 定款等に会費の定めがあること。

3 主たる事業として収益事業を行っていないこと。

4 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと。

5 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。

6 上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。

7 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1 以下であること

 

上記のいずれか(「非営利性が徹底された法人」か「共益的活動を目的とする法人」)に該当しますと、非営利型法人になります。いずれにも該当しない場合には、たとえ法人の目的が如何に公益目的の事業を行うことになっていても、その所得のすべてが課税対象になります。

 

それぞれ具体的な内容については、別の機会でご説明させて頂きますが、重要なことは、いずれのパターンでも、まず定款において必要な要件を定めているか、そしてその定款通りに運用されているかということです。特に後段の定款通り運用しているかということについて、これに抵触しますと、過去にさかのぼって非営利型法人でなかったとされ、過去の非課税額に課税されることになります。もちろん定款に定めていることと異なることを行うこと自体がコンプライアンス上の問題ではありますが、税務的にも大きな課税につながることになりますのでご注意ください。

 

②収益事業

非営利型法人に該当しても、全てが非課税となるわけではありません。法人税法に定める34事業に該当する事業を行っている場合には、たとえ法人としては営利目的でないと考えていても、その事業については課税されることになります。

法人税法に定める34事業は以下の通りです。

 

1 物品販売業                   18 代理業

2 不動産販売業               19 仲立業

3 金銭貸付業                   20 問屋業

4 物品貸付業                   21 鉱業

5 不動産貸付業               22 土石採取業

6 製造業                          23 浴場業

7 通信業                          24 理容業

8 運送業                          25 美容業

9 倉庫業                          26 興行業

10 請負業                         27 遊技所業

11 印刷業                         28 遊覧所業

12 出版業                         29 医療保健業

13 写真業                         30 技芸教授業

14 席貸業                         31 駐車場業

15 旅館業                         32 信用保証業

16 料理店業その他           33 無体財産権の提供

の飲食店業 等を行う事業

17 周旋業                         34 労働者派遣業

 

例えば、一般会員や正会員から、会の運営資金として会費を徴収する場合があります。この会費については、一般的には会の運営資金であれば、上記34事業のいずれにも該当しませんので、非課税になります。しかし、例えば会費と銘打っていても、実質がアパートの賃貸料ですと、不動産貸付業として34事業に該当し、課税されると考えられます。

 

また、学術集会などで企業用に展示ブースを設け、企業からの出展料をもって学術集会の運営資金に充てる場合があります。この場合、出展料は学術集会の運営資金に充てられるので課税されないのでは、という印象があるかもしれませんが、出展料は企業に場所を提供したことによる収入ですので、席貸業として34事業に該当し、課税されると考えられます。

 

上記の会費や出展料の通り、課税されるかどうかについては、名称だけで表面的に判断するのではなく、実質が重要になります。

 

なお、非営利型法人の方が有利と思われるかもしれません。確かに非収益事業(簡便的に収益事業に該当しない事業を指します)で利益が出ても納税が不要なので、その場合にはメリットがあります。一方で、非収益事業が赤字で収益事業が黒字の場合、非収益事業の赤字と収益事業の黒字は相殺されずに、収益事業の黒字のみで税金計算することになります。つまり、非営利型法人の方が納税額が多くなることがあります。学術集会などで、出展料(収益事業)でそれ以外の費用を賄っているというような場合などは、このケースに該当する可能性があります。

 

ただ実際の有利不利を判断する際には、一般社団法人化時の課税関係も含めて検討する必要があります(詳しくは、任意団体から一般社団法人化で説明いたします)。

 

(2)収益事業の利益の計算

一般社団法人は、正味財産増減計算書(損益計算書のようなものです)で法人全体の利益を計算しています。ここでは正味財産増減計算書をベースに計算する方法を説明いたします。他には、日々の仕訳を計上する時から収益事業と非収益事業の区分がなされるような処理方法などがありますが、最終的な結果は基本的には同じになると思われます。

 

①収益

正味財産増減計算書に計上されている各収益項目について、一つずつ34事業に該当するかを判断していきます。大切なのは、科目の名称だけでなく、実際にどのような収入がその科目に計上されているのかを再度確認することです。さらに、一つの科目の中にも収益事業に該当するものとしないものがあります。収益事業に付随する収入ということであれば、収益事業という整理で問題ないと考えられますが、別々の収入であればたとえ一つの科目であっても、収益事業と非収益事業に区分します。

 

②費用

費用についても収益と同じように収益事業と非収益事業に区分します。しかし、費用には収益事業にも非収益事業にも区分できない(双方に関わっている)費用があると思います。そこで費用については、まず「収益事業に直接要した費用」、「非収益事業に直接要した費用」、そして「収益事業にも非収益事業にも共通して要する費用」の3つに分類します。

 

「収益事業に直接要した費用」と「非収益事業に直接要した費用」は、その名の通り、収益事業もしくは非収益事業に直接紐づけが可能な費用のことを指します。例えば、「非収益事業に直接要した費用」については会費徴収について会員管理を行っている会社に業務委託しているのであれば、その業務委託費などが該当すると考えられます。また、「収益事業に直接要した費用」は、例えば専門的な書籍を制作して出版することがありますが、その様な販売の収入は、出版業として収益事業に該当すると考えられます。その出版をするために印刷を外部委託しているのであれば、その印刷代などが該当すると考えらえます。

 

「収益事業にも非収益事業にも共通して要する費用」については、例えば、収益事業でも非収益事業でも使用している固定資産や、両方に従事している従業員がいるなどがあげられると思います。

そして、「収益事業にも非収益事業にも共通して要する費用」も収益事業と非収益事業に振り分けることになります。その振分けにあたっては、使用割合や従事割合といった、それぞれその費用の性質に応じて合理的な基準で配賦することになります。

 

(3)税金計算

非営利型法人の税金計算は、前項で計算した収益事業の利益に、まず法人税法上の調整を加えることになります。

 

法人税法上の調整とは、例えば交際費などは800万円までは費用(損金と言います)と認められますが、それを超えますと一部費用として認められない(利益が上がる)、といった法人税法上の利益の調整です。

 

この調整は、どの法人でも同じように税金を課すという法人税法の考え方や政策上の理由から設けられているものですが、その調整項目自体は一般の株式会社と大きく変わることはありませんので、ここでは省略いたします。

 

この調整の結果計算された税務上の利益(所得と言います)に対して、税率を乗じることになります。一般社団法人の税率は以下のようになっています(20179月現在)。

 

所得 800万円以下   15%

所得 800万円超  23.4%

 

なお、この他に地方法人税や地方税が課されます。所得の額や自治体により税率が異なりますので一概には言えませんが、所得が低い場合(所得400万円以下)ですと、表面税率は22%程度です。また所得が800万円を超える部分については、表面税率が約37%になります。

 

2.任意団体から一般社団法人化

任意団体で運営していた団体が、規模が大きくなってきたことや、社会的信用を得るため、また役員の法的責任に対する対応などの理由から、任意団体を一般社団法人へ組織変更しようということがあろうかと思います。

 

一般社団法人化した場合に、どのような税務上の論点が出てくるかを、以下の2点で検討します。

・一般社団法人化のタイミング

・任意団体と一般社団法人の税務上の違い

 

(1)一般社団法人化のタイミングでの課税関係

一般社団法人を設立して、その法人にこれまで任意団体で行ってきた事業を全て寄付して承継する場合を考えます。

 

①一般社団法人の課税関係

事業のすべてを寄付として承継する場合、法人税法上、資産と負債の時価の差額が寄付金になると考えられます。一般社団法人では、前項の説明の通り、非営利型法人に該当するかどうかで課税関係が変わります。非営利型法人に該当しなければ、すべての収入に課税されますので、このような事業承継に係る寄付も課税対象となります。一方非営利型法人に該当すれば、課税されるのは34事業に限定され、寄付は34事業に該当しませんので、課税されないと考えられます。

 

従いまして、資産・負債が同程度の金額であれば、非営利型法人に該当してもしなくても大きな差はないかもしれません。しかし、例えば非営利型法人に該当しない一般社団法人に、多額に現預金がある事業を寄付として承継させますと、それだけで課税が生じる可能性があります。

 

②任意団体の課税関係

事業のすべてを寄付として承継する場合、任意団体でも、法人税法上寄付金に該当すると考えられます。寄付金に該当しますと、その金額や任意団体の利益にもよりますが、税務上費用と認められる金額は、その一部のみになることがほとんどです。例えば、仮に任意団体の最後の事業年度(事業を寄付した事業年度)で利益が出ていて、それに対応する費用として寄付金を考えていたとしても、法人税法上の費用としてはその一部のみであるため、納税になってしまう場合があります。

 

(2)任意団体と一般社団法人の法人税の違い

任意団体であっても法人税法上は人格のない社団等として、課税される場合があります。人格のない社団等とは、団体として組織があり、代表者がいるような団体を指しますので、一般的な学術団体等で法人格を持っていない場合、この任意団体に該当するものと考えられます。

 

任意団体と法人税法上の取り扱いについてですが、基本的に任意団体は一般社団法人の非営利型法人と同じように課税されます。つまり、収益事業を行っていた場合のみ課税され、非収益事業については課されません。つまり一般社団法人との違いは、一般社団法人は非営利型法人に該当するかどうかで収益事業のみに課税か、全所得に対して課税かが変わってきますが、任意団体であれば非営利型法人の要件に該当することなく、収益事業のみの課税となります。

 

3.消費税

ここでは、一般社団法人の消費税について、以下の順に説明いたします。

・申告義務の判断

・税金計算

 

(1)申告義務の判断

一般社団法人であっても消費税の申告が必要になるケースがあります。この申告が必要なのか、それとも不要なのか(申告義務と言います)の判断方法は、法人税とは異なっています。

 

消費税においては、法人税のように、非営利型法人であるか、収益事業を行っているか、そもそも一般社団法人であるか、こういったことは関係ありません。株式会社と同じように、収入の内容や金額で消費税の申告義務の有無を判断することになります。

 

申告義務については、消費税においては、原則的に2期前の課税売上高が1,000万円以上である場合に申告義務があると判断されます(他にも申告義務が生じるケースがありますが、ここでは省略します)。

 

課税売上とは対価性のある収入を指します。法人税の項と同じように会費と出展料を例として考えてみますと、団体の運営のために会員が負担する年会費、一般会費、通常会費といった会費については、一般的に対価性がないため、消費税の対象外と考えられています。一方、学術大会等で企業に展示ブースを出展してもらう場合の出展料などは、スペースや機材等の貸付といった対価性があるため、課税と考えられます。

 

この判断にあたっては、名称ではなく実質で判断する必要があるということは法人税と同じです。例えば、一般的に会費については、消費税の対象外と記載しましたが、仮にその団体がソフトウェアの開発のみを行う団体で、年会費(会費)を払って会員になるとそのソフトウェアを使用できる、というような場合を考えてみます。名称からは年会費ということで消費税はかからないように見えますが、一般的な学術団体等の年会費とは異なり、この年会費はそのソフトウェアを使用するため使用料が実態と思われます。ソフトウェアの使用料であれば、対価性がありますので、課税という判断になります。

 

学術団体等における収入は会費や出展料以外にも、補助金、学会誌への掲載料、認定試験の認定料やセミナー参加収入と多岐に渡りますが、それぞれこのように個別に対価性の有無の判断をすることになります。

 

このようにして計算した課税売上高の合計が2期前に1,000万円以上になりますと、当期から申告義務者となります。分かり難いところですが、当期に出展料が1,000万円を超えたとしても、2期前に1,000万円を超えていなければ、申告義務はありません。逆に当期の出展料が100万円しかなかったとしても、2期前に1,000万円を超えていたら、その100万円について申告義務が生じます。

 

なお、一般社団法人設立初年度と2年目は、2年前がないですので、申告義務はありません(他にも申告義務が生じるケースがありますが、ここでは省略します)。これは任意団体から法人化した場合でも同じです。任意団体時に毎年申告していたとしても、任意団体と一般社団法人は別組織ですので、あくまで一般社団法人として2年前がどうであったかで申告義務を判断することになります。

 

(2)税金計算

消費税の計算方法をざっくりと言えば、通常は消費税対象となる収入に係る消費税から、消費税対象となる費用に係る消費税を控除した残額が納税額となります。消費税対象となるとは、前項で対価性があると課税になると記載しましたが、基本的にはその内容と同じです。ただし預金利息や土地の賃借料、土地の売買代金などは対価性はありますが、消費税は非課税の扱いになっているものがあります。そのように非課税となったものは消費税計算から除外することになります。

 

また、実際の消費税計算にあたっては、上記非課税となる収入の割合を考慮する必要があったり、上記のような方法ではなく、簡易課税という計算方法などもあります。このような計算方法は、株式会社等と同じですので、ここでは省略いたしますが、学術団体等で見られる特殊な計算がありますので、その点について説明します。

 

学術団体等では以下のような収入がある場合があります。

・会費

・寄付金

・補助金

・交付金

これらは、全て対価性がないということで消費税はかかりません。しかし、このような収入は消費税法上、特定収入と呼ばれ、その金額が大きくなると特殊な計算が必要になります。

 

具体的には、特定収入の合計が、特定収入の合計と消費税対象となる収入との合計に占める割合が5%を超えると、費用に係る消費税の一部が控除できないようになる調整計算が必要になります。

調整計算の方法については、計算過程が煩雑なため省略しますが、収支が同じであった場合、消費税対象外の収入が多ければ当然納税は生じないというイメージでいますと、意外にも申告が生じているということもありますので、ご注意ください。

サービスについてのお問い合わせはこちら

03-5771-5670

電話受付時間:平日00:00~00:00

Mail

メールによるお問い合わせは24時間受付

お問い合わせ

03-5771-5670

税務・税金相談をご希望の方は電話か問い合わせフォームからお問い合わせください。

お問い合わせはこちら